ご挨拶
日本特殊教育学会第61回大会は、横浜国立大学が主催して開催することになりました。学内事情で8月開催になったこと、加えて、あらかじめお伝えした日程からさらに一週間前倒になってしまったことをお詫び申し上げます。8月開催になりますが、一人でも多くの皆様にご参加頂けることを心から願っています。
横浜国立大学での開催は、今から40年前、昭和59年(1984年)第22回大会以来となります。養護学校の義務化が昭和54年(1979年)、国際障害分類(ICIDH)の制定が昭和55年(1980年)でした。当時は学部生、大学院生であった私も、それらの動きに高揚する気持ちがあったことを覚えています。ところが、40年経過する中で、特殊教育を取り巻く状況は大きく変化しました。
例えば、平成26年(2014年)に「障害者の権利に関する条約」が批准されましたが、昨年の令和4年(2022年)9月には国連の障害者権利委員会から総括所見・改善勧告が出されました。また、平成19年(2007年)4月に特別支援教育が開始され約15年が経過しました。昨年の令和4年(2022年)12月には文部科学省から「通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」が出され、学習面又は行動面で著しい困難を示す児童生徒が小・中学校で8.8%、高等学校で2.2%という結果が示されました。そして、平成28年(2016年)7月に、津久井やまゆり園事件を経験することになりました。
平成13年(2001年)1月に、21世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議において「21世紀の特殊教育の在り方について(最終報告)」が出されてから特別支援教育、インクルーシブ教育システムをはじめ特別な支援を必要とする幼児児童生徒の教育・支援の充実を目指してきました。確かな実績をつくりあげてきた一方で、最近の状況は、新たな価値や変革に向けて歩みを進めていくことが求められているように感じています。
第61回大会テーマについて、大会準備委員会で議論してきました。委員から価値、創造、創出といったキーワードが共通して出されました。大会準備委員にも同様の思いがあり、おそらく学会員の皆様も同じ思いがあるのではないかと考えました。そこで、今回の大会テーマを「実践と研究からイノベーションを生み出そう」としました。
とはいっても、新たな価値や変革について、具体的に見えてきているわけではありません。まさに、みんなで考え、議論していくことが必要とされていると思います。しかし、本学会には強みがあります。多くの実践家、研究者から構成され、具体的で建設的な議論を展開できるという持ち味があります。第61回大会は、学会員の皆様のご協力を得て、それぞれの実践や研究から育んできたシーズ(Seeds)を活かしながら、新たな価値や変化について考え、意見交換するような集いとしたいと考えています。
感染対策は十分に配慮する計画ですが、残念ながら令和2年(2020年)のコロナ感染拡大前の年次大会と同様の形式や規模での開催は難しい現状があります。そのため、今回は対面に比重をおきつつ、オンデマンド配信の併用を計画しています。また、横浜周辺の会議場の関係から、大学キャンパスでの開催となります。最寄駅からの距離や地形的にもアクセスがよいと言えないことに加え(羽沢横浜国大駅は、横浜国立大学の名前がついていますが不便ですのでお勧めできません)、コテージ式キャンパスとなっており、つまり、会場を分散して配置せざるを得ない立地環境となっています。
アクセシビリティはしっかり進めてまいりますが、ご参加の皆様には大変ご不便をおかけすることをご容赦ください。学会からの支援を頂きながら、第61回大会が特別な支援を必要とする子どもたちの教育・支援について未来や夢を語り、イノベーションを考えていく機会にしていきたいと考えています。開港の地、かながわ、よこはまでお会いできることを楽しみにしています。
日本特殊教育学会第61回大会 準備委員会
委員長 渡部 匡隆(横浜国立大学)